電気計測器 ヒストリカル エピソード

第6話  メガー生誕100周年と絶縁抵抗計、接地抵抗計の進化

電気工事の竣工検査や屋内配線の検査、電気機器の絶縁劣化試験など、電気設備の安全管理上欠かすことの出来ないメガー(絶縁抵抗計)は、1889年、英国の電気技師シドニー・エバシェッド(Sydney Evershed 1858 - 1939)によって発明された。 最初のメガーは手回し発電機と指示計部分が夫々別箱に収容されていたが、その後現在のような一体化構造に変更され、以降100年以上続く絶縁抵抗計のルーツとなった。


エバシェッドは1895年、同僚のアーネスト・ビグノルスと共にロンドン郊外にエバシェッド&ビグノルス社を設立、メガーの商業的量産を開始した。 因みに絶縁抵抗計の代名詞として、今日世界中で愛用されている「メガー」という呼称は、Megaohm(メガオーム)とmeter(メータ)を合体させたもので、1903年に登録商標された同社のブランド名である。 また、2003年には同社主催による「メガー生誕100周年記念行事」が世界各国で催されたのは記憶に新しい。


メガー社製品(上:MEGGERロゴ入り)と
初期の絶縁抵抗計各種(右上、右中)
「Megger」ロゴ意匠の100年登録証書(右下)

一方、我国における絶縁抵抗計の歴史は、1920年代になってようやく横河電機や桑野電機あたりが国産化に成功、折からの電力配電網の整備、電気設備の新規導入など市場要因とも重なって順調に発展した。 とくに1960年代に入って開発された電子式絶縁抵抗計は、主要部分の直流高電圧をDC-DCコンバータと呼ばれるトランジスタ昇圧回路によって、体積比、重量比とも従来製品(発電機式)の1/2以下となった。

これ以降、「重い、大きい、操作性が悪い」と言った古い絶縁抵抗計のイメージが払拭され、応用分野の拡大がさらに加速した。 また、この直流昇圧技術は世界的にも高く評価され、1962年、松下電器産業より発表された自動絶縁計BAM-250HA/500HAが当時電気設備の普及、啓蒙を狙いとして始まった電設資材展の第3回製品コンクール(1962年)で通産大臣賞を受賞した。 その後、小型軽量化の流れは、現在のハンズフリーデザイン(首掛け式)の基礎となり、更には複数定格を持つマルチレンジ型や、データメモリなどを備えたディジタルタイプへと進化を促してきた。


国産絶縁抵抗計の進化
  左:1940年代の発電機式絶縁抵抗計(桑野電機製)
  中:1960年代 自動絶縁抵抗計 BAMシリーズ(松下電器産業製)
  右:最新のデジタル絶縁抵抗計(2010年 日置電機製)

縁抵抗計と密接な関係をもつ接地抵抗計もほぼ同時期に製品化され、絶縁抵抗計と共に電気設備、電路の保守管理用として進化してきた。 当初は絶縁抵抗計と同じく手回し発電機と、コールラウシュブリッジと呼ばれる可聴周波帯域の交流ブリッジを組み合わせていたが、 電子式の絶縁抵抗計の開発と前後して発電機部分の電子化が行われ、自動接地抵抗計が商品化された。

この自動接地抵抗計も前述の自動絶縁抵抗計と同様、電設工業展の「製品コンクール(第4回)」で通産大臣賞を獲得した。 以降、絶縁抵抗計、接地抵抗計はテスタとともに保守用測定器の三種の神器として、当時現場作業者の必携のツールとして重宝された。


国産接地抵抗計の進化
  上 :1940年代の発電機式接地抵抗計(横河電機製)
  右上:1960年代 自動式接地抵抗計(横河電機製)
  右下:最新のデジタル接地抵抗計(2010年 横河メータ&インスツルメンツ製)

(2011/6/1掲載)
目次 | 前へ | 次へ